コーティング

弊社では、金属ローラー表面に各種コーティングを行い、機能要求に合わせた表面改質を行っています。

OA部品である、中間転写ローラー等の駆動力が要求される製品に対しては、ウレタンコート(無発泡タイプ、発泡タイプ)を行い、適正な駆動力を付与した製品の提供を行っています。

また、表面汚染を低減する、防汚効果を要求される場合には、撥水、撥油性に優れたフッ素コート、耐摩耗性を要求される場合には、セラミック含有コート、摩擦力低減、表面汚染低減を要求される場合にはビーズ含有コート等、表面の機能要求により、種々のコーティングの提供が可能です。

機能で選ぶ表面改質

物質の“表”の“面”を“改”め“質”を変える! 読んで字のごとく「表面改質」です。

表面改質は、「物質の表面状態そのままでは、求められる機能を満足することが出来ない」場合などに求められる表面加工といえます。
弊社では、この“求められる機能“を満足させるべく様々な表面改質に取り組んでまいりました。

以下に取り組み例をご紹介させていただこうと思います。

1)摩擦力(表面摩擦)が求められる表面改質

表面のグリップ力(表面の摩擦係数)を上げることで、相手物を滑らないようにする、滑りにくくする、保持する、
というような機能が求められるケースがございます。

日常の身近な例を挙げると、人が握るグリップ部分(テニスラッケト、ゴルフクラブ等のグリップ部)やスポーツシューズ底などがあると思います。

つまり、表面の摩擦係数を上げることで相手物との接触状態を向上させ、より高いグリップ力を得る必要がある場合などに求められる機能と言えます。

【弊社の実用例】

カラーコピー機の転写方式として、中間転写ベルト方式を採用するケースが多く、中間転写ベルトを駆動させる中間転写ベルト駆動ローラーが必要となります。  中間転写ベルト駆動ローラーには、転写ベルトを安定駆動させる為、ローラー表面の駆動摩擦力の安定性が求められます。この機能を満足させるために、
金属ローラーの表層にウレタン系、発泡ウレタン系の表面塗装(表面改質)を行い、駆動摩擦力を付与しています。
ウレタンコート、発泡ウレタンコートは薄膜コートであり、膜厚の寸法変化が非常に少なく、また、ゴムなどに比べても耐久安定性に優れています。

1.ウレタンコート(導電、非導電)

製品写真
ウレタンコート

表面観察写真
ウレタンコート(表面拡大写真)


2.発泡ウレタンコート(導電)

製品写真
発泡ウレタンコート

表面観察写真
発泡ウレタンコート(表面拡大写真)


2)錆を防ぐ表面改質

日常の至る所で見かける金属の錆。 金属と錆は切っても切れない関係にあります。

金属の錆を防ぐためにも様々な表面改質が行われています。身近な例では、鉄の表面に塗料を塗ることで酸化(錆発生)を防ぐ、などがあります。

【弊社の実用例】

切削、研削した鉄製品の表面は非常に錆が発生し易く、加工後、防錆油を塗布する等の処理が必要となります。

加えて弊社では、鉄製品加工後に「パーカー処理」(リン酸塩処理※)を表面に施し、防錆対策も行っております。

「パーカー処理」そのものは一般的には塗装の下地処理として施されるケースが多く、
弊社の「パーカー処理」もお客様ご要望により塗装前下地処理を目的として施しているものですが、
この処理をすることで同時に錆びに対する抑制効果も得ることができます。

※化成処理の代表的な方法の一つで鉄鋼や亜鉛などの金属表面にリン酸亜鉛などの金属塩の薄い皮膜(ミクロンオーダー)を生成させるものです。
その工業的目的は金属製品の錆防止でありましたが近年は塗装下地として塗膜が剥離しにくくすること、
塗膜に傷が付いても錆が広がらないようにすることを目的とし、自動車を初めとした工業製品に広く標準的な方法として採用されています。

「パーカー処理」の防錆効果

「パーカー未処理品」と「パーカー処理品」を23℃、33%の調温湿された部屋に6日間暴露した状態で保管し、錆の発生状況を比較しました。

「パーカー未処理品」では部分的に錆の発生が見られますが、「パーカー処理品」では錆の発生は見られません。

パーカー未処理品
パーカー未処理品

パーカー処理品
パーカー処理品


パーカー未処理品(顕微鏡写真)
パーカー未処理品(顕微鏡写真)

パーカー処理品(顕微鏡写真)
パーカー処理品(顕微鏡写真)


「パーカー処理」を行った加工品は、密閉梱包のうえ、温湿度管理された空調室にて防錆対応された状態での保管が可能となる事から、
必要に応じて必要数量の製品をご提供する事が可能です。

(リン酸塩処理加工品)
リン酸塩処理加工品

(調温湿保管室)
調温湿保管室


3)熱を伝える表面改質

「熱を伝える」という機能がしばしば求められます。

熱は放っておいても高いほうから低い方へ伝わる性質がありますので、「熱を伝える」をもう少し正確に表現するならば、
「伝熱効率を上げて更に熱を伝えやすくする」という表現になります。

伝熱性の高い材質を選ぶことも重要な要素ですが、その材質にさらに伝熱性を高める、
熱吸収率を上げるという目的での表面改質を行うケースがあります。

【弊社の実用例】

コピー機の定着用加熱ローラーの芯金には、アルミ材、鉄材が使用されています。

近年はコピー機の定着部の消費電力低減等の省エネ観点から、ローラーの低熱容量化、伝熱効率の向上が望まれ、
鉄系ローラーの薄肉化(厚みが薄い方がローラー内面から外面への熱の伝わりが早い)という方向が一つの消費電力低減対策となっています。
熱伝導率の面ではアルミの方が鉄に比べ優れていますが、薄肉化を図った場合の強度確保等(アルミに比べ同じ薄さでも鉄の方が強度を保てる)
の観点から鉄が採用されるケースも多くございます。

アルミ
比熱(J/gK) 0.88 0.44
熱伝導率(W/mK) 204 53

弊社では、鉄系ローラーの薄肉化対応を行っており、0.2mm程度の薄肉鉄系ローラーの提供も行っています。
定着ローラーの場合はその用途から耐熱性が求められますので、ローラーの塗装前下地処理として必要となるパーカー液にも同様に耐熱性が求められます。
弊社ではパーカー処理材料として、耐熱性の高いリン酸亜鉛処理材料を使用するとともに、加熱ローラーの発熱体からの熱吸収を高める為、
ローラー内面に耐熱性黒色フッ素系塗料を塗布し、熱吸収を高めるための内面塗装を実施しています。

このローラー内面に耐熱性黒色フッ素系塗料を塗布することでローラー内面に挿入される発熱体からの熱の吸収率を更に高め、
ローラー外面側への熱伝導を促進する機能を付与しております。

内面塗装機
内面塗装機

4)離型性を上げる表面改質

離型性とは、物質表面への粘着やこびりつき等を起こさない性質を表し、非粘着性という言い方もできます。

ご存知の通り、フッ素樹脂コーティングが施されたフライパンなどはこの性質を利用した代表的なものです。

弊社の金属ローラーにおきましても、その用途においてこの離型性が求められるケースがございます。

【弊社の開発例】

フッ素コーティング素材は、表面に触れる物質との相互作用が極めて小さくなり、水や油、汚れもはじき、粘着し難い、濡れ難い、
汚れ難い特性を有しています。

下記写真は、当社フッ素コーティングパイプにオリーブ油を滴下した写真(左)です。

フッ素コーティングがあると、オリーブ油は垂れ下らず液滴状態を維持していますが、フッ素コーティングが無いアルミ素材では、
オリーブ油は垂れ下がってしまいます。

フッ素コーティングを付与することにより、表面層に撥油性効果が現れ、汚れの原因となる各種液体(水汚れ、油汚れ)をはじくとともに、
微粉体も付着し難く、汚れを落としやすいので、離型効果、防汚効果が期待できます。

フッ素コートあり
フッ素コートあり

フッ素コートなし
フッ素コートなし


フッ素コート開発品(導電・非導電)
フッ素コート